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2015.04/16(Thu)

【創作】君に花を 01



珠木です。
お久しぶりです。

前回の更新からひと月以上開いてしまいそうなのですが、日記を更新する余裕がなさそうなので、
書き溜めていた創作でお茶を濁そうと思います。
すみません。


創作も日記も、少しずつでも進められればいいのですが。
忙しかったり気分が乗らなかったりすると、とたんに更新が滞ってしまうんですよね。


……愚痴にになりますね。
失礼しました。


ずっと書きたかった話のオープニングです。
初代の伴侶・レナルド君と、その親友イヴァーノの話。

よろしければ、続きからどうぞ。







君に花を 01



 照りつけるソルの力強さは夏の暑さそのものだが、吹き抜ける風の優しさからは、何処となく秋の匂いが感じられる。
 晩夏の昼下がり。
 フェイの森で大人たちは、間もなく決勝戦を迎える親衛隊候補の選抜戦の動向や、その後の星祭りの幻想的な様子などを口々に話ながら、フライダ川の浅瀬に釣り糸を垂らし、ワビやガゾを釣り上げている。
「待って!」
 二人の少年が、大通りの方から相次いで駆けてきて、大人たちの脇をすり抜けて行った。学校を終え、フェイの森に棲むという精霊の元へ遊びに行くのだろう。
「おせーぞ!」
 先を行く背の高い金髪の少年と、追いかける臙脂色の髪の小柄な少年は、靴が濡れるのもいとわず、勢いよく水しぶきを上げながら、浅瀬を走り抜けると、精霊が棲む大樹がある方角へと、またたく間に消えて行く。その後ろ姿を、川辺で働く大人たちの半数は、元気に遊ぶ子供たちを微笑ましく眺めやり、残り半数は、無遠慮な衝撃で浅瀬から姿をくらました獲物に眉を顰め、しかしどちらも取り立てて口にすることなく見送っては、それぞれの作業に戻っていく。
 川のほとりに座り、仕事をするわけでも、会話に興ずるわけでもなく、水面を見つめていた娘は、前者の一人だった。アネット・セトポンは、間近で跳ね上げられた水飛沫に、服の裾が濡れないか気にしながら、それでも元気よく駆けていった少年に、暖かい視線を送る。
 そろそろ壮年に差し掛かろうとする年代のアネットだが、彼女自身の幼少期は彼らのような活発さとは無縁だった。闘士長を務める力強い母とは対照的に、幼い頃から頻繁に熱を出しては寝たり起きたりを繰り返してきた。学校へ通ったのも、三年間で数えるほどしかない。毎日通って友と学び、放課後は夜の鐘が鳴るまで虫とりや水切りに興じる彼らは、アネットの目にはこの上なく眩しく映ったものだった。
 遊びに行けない自分の貧弱な身体を呪い、同級生たちに羨望したこともあった。成人し、結婚し、出産する友人たちに、嫉妬することも。だが、それも、もはや過去の事になりつつある。友人の子供たちが、学校に通い、国中を走り回って遊び、成長する姿を微笑ましく眺めることが出来る程度には、それらが自分の人生からは縁遠い物と諦めきっていた。
 傾きかけたソルが、川面に長い影を落とし始めた。一人、また一人と釣竿を引き上げ、短い挨拶を交わして帰路についていく。赤色と黄色の中間色が、水面で乱反射し、辺り一面を彩っていく。
 美しい光景だが、水辺は気温が下がるのも早い。身体に障る前にそろそろ帰らなければ、と腰を浮かしかけたとき、川面に映るアネットの影に、別の二つの影が重なった。
「おねーさん」
 幼い声がした方を向くと、先程精霊の木へと向かっていた少年たちだった。にこにこと嬉しそうな小柄な少年の数歩後ろで、もう一人の背の高い少年が不貞腐れたようにそっぽを向いている。
「これ、イヴァーノくんが、おねーさんにって」
 小柄な少年が、後ろ手に持っていたものをアネットに差し出した。
「あたしに?」
 それは小さな花冠だった。ルキアの弦を緩く編んで輪にしたものに、モリナやダガンの花を挿して飾っている。冠というよりは、祭りの際に家々に飾るリースの方が近いかもしれない。
「今日、 誕生日なんでしょう? それで、イヴァーノくんが作ったんだよ」
 臙脂色の髪を揺らして少年は誇らしげに言った。新しい生傷だらけの両手を見れば、その台詞の助詞が"が"ではなく"と"なのは明らかだ。だが、それを指摘して少年の矜持を傷つけるほど、アネットは未熟ではなかったし、拒絶して、連日二人が学校後の自由時間を費やして製作してくれた努力を無碍にするほど、狭量でもなかった。
「そう、ありがとう。――イヴァーノ、レナルド」
 微笑んで礼を言い、花輪を受け取ると、臙脂の髪の小柄な少年――レナルド・マクドナルドは、安心したようにほっと息を吐いて、背後の友人を振り返った。背の高い金髪の少年――イヴァーノ・ゴートンは、相変わらず口をへの字に曲げたまま視線を上げようともしないが、その顔は西日の所為以上に紅潮していた。
 赤く染まった少年の金髪を、アネットは優しく撫でた。
「……でっかくなったなあ、イヴ」
 アネットと同じくらいか、下手をしたら彼女よりも高い位置にある少年の頭を撫でてやるには、腕を上に伸ばさなければならない。ついこの間までは、自分の腰くらいまでしかなかったと思ったのに、とアネットは感心したように溜息をもらした。
「何歳だったっけ?」
「……昨日、五歳になった」
「そうか、それはおめでとう。早いものだな。来年には成人だね」
「お、おう。…………だ、だから!」
 ようやくイヴァーノは視線を上げた。碧い瞳が真正面からアネットを捕え、既に身長は追い抜かれていた事に、アネットは気付いた。
「せ、成人したら……」
「成人したら?」
「成人したら、俺と、けっ、結婚してください!」
 森中に響き渡った突然の告白に、帰り支度をしていた大人たちが一斉に振り返った。レナルドが慌てふためいて、友人を下がらせ嗜めようとする。その手を振り払い、一身に集まる視線を意にも介さずイヴァーノは、口をきゅっと真一文字に結んだまま、目の前の想い人を見据えていた。
 アネットは、何を言われたのか判らなかった。思わずぽかんと口を開きかけ、集まった視線に気付いて表情を取り繕う。眼前の少年は、少年と呼ぶには大きくなった少年は、真剣だった。アネットは精一杯、しかつめらしい顔をしようとして、――失敗した。
「笑うなよ!」
「いやあ……悪い、悪い」
 謝りながらも、ククッと忍び笑いが堪え切れない。少年の顔は、真剣だった。だが、幼かった。アネットにとって、"子ども"の顔だった。
「いっちょまえの口きけるようになったなぁ、イヴ。だが、大人をからかうもんじゃない」
「ち、違うっ、俺はっ――」
「それに」
 激昂しかけたイヴァーノを押さえるように、被せ気味の台詞と共にその肩に手を置く。逆の手で、もらった花輪を自分の顔の横で掲げて見せた。
「贈り物も自分で渡せないような甲斐性ナシじゃ、まだまだだな」
「……っ!」
 絶句したイヴァーノの肩をポンと叩いて、アネットは少年に背を向け歩き出した。砂利を踏むその音を合図に、思わず手を止め動向を見守っていた衆目も再び動き出し、それぞれが帰路へと就いていく。友人を必死で慰め帰宅を促すレナルドの声と、それを無視した突き刺さるような視線が、アネットの背には届いているはずだったが、彼女は振り返ることなくフェイの森の奥へと消えて行った。
 止まっていた時が、動き出した。











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